2023年の日本の広告市場は、大きな変化と成長を遂げました。電通の最新レポートによると、総広告費は前年比103.0%の約7兆3,167億円に達し、特にインターネット広告費の急伸が市場を牽引しました。
この成長の背景には、コロナ禍を経てデジタル化が一層進み、オンライン上での広告投資が急増したことがあります。また、従来のマスコミ四媒体(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ)は依然として高いシェアを維持しつつも、デジタルメディアとの連携を強化し、広告効果の向上を図る動きが見られました。本セクションでは、具体的な媒体別広告費の内訳や、業種別広告投資の動向について詳しく解説し、今後の市場展望についても触れていきます。
引用元:www.dentsu.co.jp/news/release/2024/0227-010688.html
目次
媒体別広告費の詳細
2023年の日本の広告市場は、各媒体ごとに異なる成長傾向を示しました。
総広告費の増加に最も貢献したのはインターネット広告で、前年比107.8%増の3兆3,330億円を記録し、市場全体の約45%を占めました。
一方、マスコミ四媒体広告費(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)は減少傾向にあり、前年比96.6%減の2兆3,161億円となっています。
しかし、テレビ広告は依然として広告市場の大きな割合を占め、動画広告と組み合わせた戦略が注目されています。
また、プロモーションメディア広告費は1兆6,676億円となり、リアルイベントや屋外広告が回復基調にあります。それぞれの媒体が持つ特性を活かし、多様な広告手法が引き続き求められています。
マスコミ四媒体広告費
2023年の日本におけるマスコミ四媒体広告費は2兆3,161億円で、前年比96.6%とやや減少しました。マスコミ四媒体はテレビメディア、新聞、雑誌、ラジオから構成され、それぞれ異なる傾向を示しました。
- テレビメディア広告費:1兆7,347億円(前年比96.3%)。テレビ広告は堅調に推移し、特にインターネットとの連動広告が市場を牽引しました。
- 新聞広告費:3,512億円(前年比95.0%)。新聞広告は引き続き減少傾向にありますが、地方紙など一部の市場では依然として影響力を保っています。
- 雑誌広告費:611億円(前年比100.2%)。雑誌広告はデジタルメディアへのシフトが進む中で横ばいとなりました。
- ラジオ広告費:1,139億円(前年比100.9%)。ラジオ広告は若干の増額となりましたが、地域密着型の広告手法が引き続き利用されています。
テレビメディア広告費が全体の約75%を占めているため、マスコミ四媒体全体の動向は主にテレビ広告によって左右される傾向があります。一方で、新聞や雑誌、ラジオ広告はデジタルとの融合を進め、ターゲット層に合わせた新しい広告形態を模索しています。
2023年のインターネット広告費
2023年のインターネット広告費は、前年比107.8%の3兆3,330億円と、引き続き堅調な成長を見せました。この成長は、デジタル広告市場の多様化と、動画広告やECプラットフォームを活用した広告の増加によるものです。内訳は以下のとおりです:
- インターネット広告媒体費:2兆6,870億円(前年比108.3%)
広告媒体費は引き続き最も大きな割合を占めており、特に動画広告やSNS広告の需要が高まりました。 - 物販系ECプラットフォーム広告費:2,101億円(前年比110.1%)
物販系ECプラットフォームを利用した広告は成長を続けており、消費者のオンラインショッピング行動を背景にさらなる増加が期待されています。 - インターネット広告制作費:4,359億円(前年比103.7%)
制作費も堅実に成長しており、インタラクティブなコンテンツや高品質な動画制作への需要が拡大しています。
インターネット広告費の増加は、コロナ禍を経て進んだオンライン消費行動の定着や、企業のデジタルシフトによる広告戦略の変革が影響しています。
2023年のプロモーションメディア広告費
プロモーションメディア広告費は、前年比103.4%の1兆6,676億円となり、イベントや屋外広告の回復が見られました。
屋外広告:2,865億円(前年比101.5%)
都市部を中心に回復傾向が強まりました。
交通広告:1,473億円(前年比108.3%)
鉄道や空港での広告需要が高まりました。
イベント・展示・映像ほか:3,845億円(前年比128.7%)
大規模イベントの復活が大きく寄与。
業種別広告費の傾向
2023年の業種別広告費を見てみると、「交通・レジャー」「外食・各種サービス」「飲料・嗜好品」「薬品・医療用品」など6業種が増加傾向にありました。
特に「交通・レジャー」は前年比で約114.9%と大きく伸びており、コロナ禍の規制緩和による外出需要の増加が影響しています。
また、「外食・各種サービス」も回復基調にあり、前年比110.7%という結果を見せています。
一方、「官公庁・団体」は前年の選挙関連広告の反動減の影響を受けて82.4%にとどまりました。
これらの傾向から、消費者のライフスタイルの変化や経済活動の回復が、広告費の動向に大きな影響を与えていることがわかります。
インターネット広告の成長要因
2023年におけるインターネット広告費の堅調な成長の背景には、いくつかの重要な要因があります。
まず、動画広告の需要増加が挙げられます。
特に、SNSプラットフォームや動画共有サイトにおけるターゲティング広告は、消費者の視聴行動に合わせた効果的な配信が可能となり、多くの企業が投資を拡大しています。
また、物販系ECプラットフォームを活用した広告の拡大も大きな成長要因です。
消費者がオンラインショッピングを日常的に利用するようになったことから、ECサイト内での商品訴求の必要性が高まりました。
さらに、AI技術やデータ解析の進化による広告の最適化も成長を後押ししています。
これにより、広告の効果測定が容易となり、費用対効果の高い広告運用が可能になったことが、インターネット広告市場のさらなる拡大につながっています。
動画広告の急成長
動画広告は近年、インターネット広告市場における成長の大きな要因となっています。2023年には、動画広告市場が前年からさらに拡大し、企業がマーケティング活動において動画コンテンツの活用を一層進めたことが見受けられます。この成長を後押ししたのは、動画配信プラットフォームやSNS上での動画視聴の増加です。特に、視聴者の利用時間や利用頻度が増加し、広告主にとって効果的なプロモーション手段としての動画広告の魅力が高まっています。
具体的なデータによると、テレビメディア関連の動画広告費は前年同期比で約26.6%増加し、443億円に達しました。これは、地上波テレビや衛星放送によるコンテンツのデジタル展開、見逃し配信サービスの利用拡大などが大きく寄与した結果です。また、インターネットテレビサービスにおけるコンテンツの多様化もユーザー数の増加に繋がり、動画広告市場を支えています。
このように、動画広告は企業にとってブランド認知度を高め、消費者とのエンゲージメントを強化するための重要な手段となっています。今後も技術革新と消費者行動の変化に伴い、動画広告の重要性はさらに増していくことが予想されます。企業がこの成長市場で効果的なマーケティング戦略を展開するためには、ターゲット層に合わせたクリエイティブな動画コンテンツの制作が求められます。
物販系EC広告の拡大
2023年の日本の広告市場において、「物販系ECプラットフォーム広告費」は2,101億円を記録し、前年比110.1%と二桁成長を遂げました。この大幅な増加は、コロナ禍を契機としたEC需要の高まりが持続していることが背景にあります。特に、生活家電や雑貨、書籍、衣類、事務用品といった物品を販売するECプラットフォームでの広告投資が堅調に推移しました。
物販系EC広告の特徴として、消費者の購買行動がオンラインにシフトしたことにより、店舗あり事業者の広告出稿が増加している点が挙げられます。加えて、ECプラットフォーム内での競争激化に伴い、広告主が効率的な出稿を求めて広告費を積極的に投入する動きもみられました。
このような傾向は、デジタルマーケティングのさらなる進化を示しており、今後も物販系EC広告の成長が期待されます。特に、ECプラットフォームが提供するデータ活用の高度化や、パーソナライズ広告の普及によって、物販系EC広告はさらなる拡大を続けるでしょう。
今後の広告市場の見通し
2023年の日本の広告市場は堅調な成長を見せ、前年比103.0%という成果を挙げました。
この流れを受け、今後も広告市場の拡大が期待されています。
特に注目されるのは、インターネット広告と物販系EC広告のさらなる成長です。
物販系ECの普及は引き続き消費者行動に大きな影響を与え、企業はECプラットフォーム内での競争優位を確立するために広告出稿を強化すると予想されます。
また、動画広告の急成長も市場拡大を後押しする要因の一つです。スマートフォンやタブレットの普及に伴い、視聴環境が整ったことで、広告主は消費者との接点を増やすために動画コンテンツの活用を進めています。
一方で、広告費の使い方はより戦略的になり、データドリブンマーケティングやAIを活用した広告運用が主流となるでしょう。
パーソナライズされた広告や、消費者の興味関心に基づくターゲティングがより精密化することで、広告効果の最大化が期待されます。
さらに、社会的な責任や持続可能性を意識した広告表現が求められる中で、広告主は信頼性と透明性のある情報発信を意識する必要があります。
今後も市場は多様なニーズに応える形で進化を続けていくでしょう。
まとめ
2023年の日本の広告市場は、インターネット広告の急成長や物販系EC広告の拡大、動画広告のさらなる普及といった要因を背景に、前年比103.0%という堅実な成長を遂げました。
特にインターネット広告費は、総広告費の約50%を占め、今後も市場を牽引する存在となることが予想されます。
また、業種別では「サービス業」「情報通信業」「小売業」が広告費増加の中心となり、これらの分野における競争はさらに激化する見通しです。
一方で、消費者の広告への信頼を得るためには、企業がデータの活用や広告表現において透明性を確保し、社会的責任を果たす姿勢が重要となります。
今後の広告市場は、経済状況や消費者の行動変化に強く影響されるため、柔軟な対応と持続的な戦略が必要です。
さらに、AIやデータドリブンマーケティングの進化により、より効果的かつパーソナライズされた広告が求められます。
広告主はただ費用を投じるだけではなく、消費者にとって有益な情報を提供するという視点を持ち続けることが、今後の成長のカギとなるでしょう。
広告市場は今後も多様化し続けるため、各企業はこの流れをうまく活用して、より効果的なマーケティング活動を展開することが期待されます。